クラウと知り合ってから時が大分経ち、お互いのことを理解し始めていた頃だった。
「スピカ」
何時も会う公園で、ふとクラウに名前を呼ばれ、スピカは振り向く。
クラウの手には小さな箱が抱えられていた。
「何ですか? これ」
クラウは照れくさそうに視線を反らす。
「良いから開けてみて欲しい」
スピカは箱を受け取り、包装をそっと開き、箱の中身を確認した。
「わあ……」
スピカは思わず感激の声を出す。
中には赤いリボンが入っていたからだ。
「君に似合うかなと思って……買ってみたんだ。今日は君の誕生日だし」
スピカはリボンを取り出し、嬉しそうに笑った。
「可愛い」
率直な感想を述べる。
「つけてもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
スピカは頭に赤いリボンを頭に結ぶ。
「どう……ですか?」
スピカが訊ねると、クラウは満足げに微笑んだ。
「似合っているよ」
彼の言葉に、スピカは頬が赤くなった。

クラウから貰ったリボンをスピカはベッドで眺めていた。
「先輩……」
スピカは寂しげに呟く。
体の傷は完治して、今は自宅にいる。
「どうして……わたしを置いていったんですか……?」
スピカの瞳から薄っすらと涙が浮かぶ。
クラウの告白と最初で最後のキスが脳裏に蘇り、悲しみが沸きあがる。
「わたしも……先輩が好きだったのに……」
スピカは自分の思いを口にして、リボンを胸に寄せた。
涙がベッドに落ち、複数の染みを作る。
肉体の傷は治っても、精神に受けた傷は深い。
食欲が沸かず、行動を起こす気力も失せていた。
来る日も、来る日もクラウと過ごした時間を思い出していた。
「先輩……もう一度会いたい……」
スピカは枕に顔を埋めて泣いた。
クラウと話がしたい、リボンを褒めてもらいたい。
出来ないと分かっていても、想いは抑えられない。
「会いたいよ……」
スピカは自室で泣いた。


3 戻る5

inserted by FC2 system