制服に着替え、僕はその足で生徒指導室に赴くことになった。
翔太くん達は無罪放免で帰ったけどね。
輝宮先生にきっちり叱られた上に、例のごとく反省文さ、しかも輝宮先生は用事ができたと言って退室し、残ったのは僕と姉さんだけ。
あー書き慣れてるとは言え、面倒臭いね。
僕はちらりと姉さんを見ると、姉さんは口をへの字に曲げている。
けど、そろそろ膠着状態はいい加減に解消したいよ。
僕は恐る恐る声をかけた。
「……まだ怒ってる?」
僕の声に、姉さんは反応した。
「さっきのことはもういいわ、あなたらしい迷惑行為ね、反省する必要があるわ」
「そうだよね、悪かったよ」
僕は言った。
立体起動のことは、危ないなと我ながら思ったので、これからは自重したい。
「……この前のことは私のことを思ってやったんでしょ?」
姉さんは僕を見つめて言った。
「ずっと考えてたの、あなたがどうして女の子達を泣かしたのかって……」
「その件も言い過ぎたと思ってるよ」
僕は表情を曇らせる。
今考えれば度が過ぎてたかも。
「私のことを思って言ってくれたことは嬉しいけど、でも、風紀委員の立場上悪口は慣れっこよ」
「そうなんだ……」
「今度から私の悪口を言っている人がいても、聞き流して欲しいの」
風紀委員は嫌な役回りなので、人の陰口は覚悟しなければならない。
姉さんはその覚悟を持って風紀委員の仕事をこなしているんだな。
「……我慢してみるよ」
少し考えて僕は口を開いた。
姉さんがそう言うなら嫌だけど仕方ない。
「有り難う……それとごめんね、無視したりして」
姉さんは感謝と共に謝罪もした。
これで仲直りってことだよね?
気になったので、反応を試してみることにした。
「もう良いよ、今回の件で姉さんの考えが分かったから」
僕は真っ白い原稿用紙を姉さんに突き出した。
「だから反省文は許してよ、これ面倒臭いから」
「駄目よ、ちゃんと書きなさい」
「今度はモーグリの着ぐるみにするからさ~」
モーグリとはファイナルファンタジーというゲームに出てくるマスコットキャラだ。
「優! 真面目にやらないと怒るわよ!」
姉さんは注意した。
でも、さっきに比べてトゲが抜けてるので安心した。
「分かったよ、やるからそんな怖い顔しないでよ~」
僕は姉さんを宥めて、反省文にとりかかった。

反省文は手間だけど、姉さんと仲直りできたから、いい一日で終わりそうだった。


2
戻る 

inserted by FC2 system