わたしが目を覚ますと、そこは白い部屋でした。
わたしを手当てしてくれたお医者さん話によるとわたしは大きな事故に巻き込まれ、病院に運ばれたのです。手や頭には包帯が巻かれ怪我をしているのも事故が原因らしいです。
怪我だけだったらまだ良かったのですが、わたしの頭の中から事故や色んな記憶が抜け落ちていました。
これも事故が元で戻るのは時間がかかるらしいのです。
何度か思い出そうしてみましたが頭が痛むので、お医者さんの言うことに従った方が良さそうです。
更に悪いことに今回の事故でわたしの両親は亡くなったそうです。そのためわたしの幼馴染みの男の子の親がわたしを引き取ってくれるというのです。
……親が亡くなったと聞かされた時は辛かったです。残っている記憶の中でのわたしの両親はわたしを大切にしてくれたからです。
会えないのは悲しいです。

わたしの体の怪我が治り、退院が決まった日のことでした。男の子とそのお母さんがわたしの前に現れました。
今まで来なかったこと(お医者さんの配慮だそうです)を謝り男の子が言いました。
「具合はどう?」
男の子が心配そうにわたしに訊ねてきました。
茶色い髪に、青い目が印象的です。
「大丈夫」
「僕はリンっていうんだけど……覚えてる?」
リンという名前に、私は考え込みました。
しかしこの子のことは思い出せません。
「思い出せない」
私は首を振りました。
隣にいた男の子のお母さんは言いました。
「あなたはリンと仲が良かったの、その事もきっと思い出せるわ」
男の子のお母さんは優しく言ってくれました。
親のことは記憶にあるのに、男の子のことか消えているのは不公平な気がしました。
「焦らずにいきましょう、時間はあるんだから」
男の子のお母さんはわたしに笑いかけました。
不安と戸惑いはありましたが、やっていける……そんな気がしました。
「わたしはラフィアと言います」
わたしはお医者さんに言われた自分の名を口にしました。
「これからお世話になります」
わたしは頭を下げました。
すると男の子はわたしに手を伸ばしてきました。
「宜しくね、ラフィア」
わたしは恐る恐る手を動かして、男の子の手を握りしめました。
人特有の温かさにわたしは少し安心しました。
「うん、宜しく」
わたしは少し笑いました。

こうしてわたしはリン君の家族の一員となりました。
リン君の手の暖かさは一生忘れないでしょう。



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