窓から外を眺めると、空から雪が降っていた。
スピカは雪を見ると自然と笑みが零れる。

幼い頃、弟のハンスと雪遊びをした楽しい記憶が蘇ったからだ。

雪玉を飽きるまで投げ合ったり、どちらが大きな雪だるまを作れるか張り合っていた。
他にも、白い化粧をした森の中に、雪の妖精を見つけるために一緒に探索した。
雪の日は楽しい思い出が詰まっている。

懐かしい記憶に浸りつつ、スピカは窓を開き、手を伸ばす。
雪はスピカの手に落ち、冷たい感覚が掌に広がり、やがて水となった。
……ハンスもこの雪見てるかな
手を引っ込めて、スピカは思った。今は生き別れになってしまった弟のことを考えた。
……見てるといいな。
スピカは淡い期待を抱いた。
この雪をハンスが見ていることを。

「ご飯できたよ」
友達の声が響いた。スピカは返事をして、窓を閉めると、駆け足で部屋を去った。

外の雪は静かに積もっていた。

戻る


inserted by FC2 system