小型船は広い海をひたすらに進み続けていた。彼等が住む場所へ帰るために。 
 潮の香りが漂う甲板で、スピカとチェリクは遅い昼食を取っていた。
 スピカの友達だった男・アディスの裁判を傍聴していたためである。
 「今回はお疲れ様です。スピカさん」
 サンドイッチを食べ終え、チェリクが口を開く。
 「どういたしまして、それとごめんね、私用で巻き込んだりして」
 笑うのと同時に、スピカは謝った。
 ルシアにも指摘されたが、闇の集団に関係あったとはいえ、スピカの個人的な問題だったのも事実。
 もし、宿敵と無関係だったら、それこそ討伐隊にとって大きな損害だった。
 今考えてみれば、いかに自分の行動が軽率だったのかを痛感する。
 チェリクは軽く首を横に振る。
 「僕は自分の意思で行動したんです。例え闇の集団とは関係なかったとしても、スピカさんを責めませんよ」
 チェリクは力強く言った。
 彼の表情は明るく、言葉どおりスピカを責めている様子はない。
 穏やかな彼の性格にスピカは救われた。
 「それに、スピカさんと一緒に行動すると毎回勉強にもなりますし、無駄なことは一つも無いです」
 「……有難う」
 スピカは照れくさそうに言った。
 チェリクは紅茶の入ったカップに手を伸ばし、一口すすった。
 こうして穏やかな時間を過ごせるのも、あと少し、本拠地に着けば雑務などに追われるだろう。
 それでも、後輩と過ごす安らぐ一時を大切にしたいと思った。
 
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