「何でこんなことになったんだろう」
私は机で腕を組んで泣いていた。手には彼氏から貰ったイヤリングを握っている。
彼氏とは三年間付き合っていたが、別れの言葉を告げられてから約二週間が経っていた。心が空っぽで時間が経過したことすら感じない。
「好きな人ができたから別れて欲しい」
とても悲しかった。言われた瞬間私の中にある何かが崩れ去った。
大好きだった彼から告げられた別れ、とても諦めきれず私は彼の腕にしがみついて、必死に別れないで欲しいと願った。
 二週間前の週末は私とデートをして楽しんでいたのに、なぜ急に離れ離れにならないのか分からない。私は彼がいなくなっては何を支えにして良いのか分からない。
 二つの気持ちが私の中で交差した。それほど彼を失うのが怖かったのだ。
 しかし彼の気持ちを変えることはできず、彼は私の腕を振り払って言葉を放つ。
 「お前にはうんざりしたんだ。もう電話もメールもするな」
 彼は私に背を向けて、それ以上何も言わずその場から去っていった。
 彼の言葉が私の脳内に響き渡り、私はしばらく動けなかった。両目から涙が溢れ出して地面に零れ落ちる。
 私の何が悪かったのだろうか?
 どこか至らない所があったの?
 考えても考えても分からない。私は彼でないのだから。
 教科書にも、ノートにも、テレビを見ても私が求めている答えはない。本人に直接問いただしたいが心の傷を再び抉る真似など御免だ。
 こんな別れ方をしたが、彼氏と付き合っていた時は楽しかった。
 最初の出会いは友達に誘われて合コンに参加した時だった。印象はなかなか格好良く、しかも優しそうだった。その後彼の方から付き合って欲しいと言われ私は迷わず「はい」と快く返事をした。
 彼と過ごす時間はとても幸せだった。初めて感じた優しさや、私に対する愛情も目に見える形で伝わってきたからだ。
 初めてのデートで行った遊園地のお化け屋敷では、幽霊を扮した従業員が真っ暗な所から急に現れた時は思わず可愛い声を上げてしがみついた。その時の彼の照れくさそうな顔が忘れられない。
 その後、彼が私の肩に手を回して
 「今度来たら俺が守ってやる」
 と言ったことが頼もしく思えた。
 下らないケンカをして、冷静になるために二週間ぐらい会わなかったこともあった。原因は私とバイトどっちが大切なのかだった。今考えると恥ずかしいな。
 けどこのケンカがあったから、彼の本心が聞けたんだっけ。
 「この間はごめん、俺が悪かったお前がいなくなったら困るんだ。だからもう一度付き合おうぜ」
 そう言って私を両手で抱き締めてくれた。この時ようやくお互いの壁が無くなったのを感じた。
 私は彼に何でも話せるようになった。将来の悩みや、自分の家族のことについて、就職活動が思うように上手くいかないことも。
 彼の励ましがあったから、長く辛い就職活動の末に内定を貰えた。自分に自信が持てるようになった。
 でも、彼はもういない……別れてしまったから。
 いい加減忘れないといけないのに、彼が好きだった自分がいるせいで忘れられない。
 正直内定を辞退しようかと思った。しかしここで逃げ出したら、彼と繋いでいた思い出を否定することにもなる。それに合格を祝ってくれた家族・友達を裏切ることにもなるのでできなかった。
 彼の記憶を引きずったまま、私は両目に溜まった涙を拭った。悲しいけどいつまでも立ち止まってはいられない。明日は会社のある町に引っ越すために忙しいからだ。
 私はイヤリングを握ったままベットに潜る。そして……
 「おやすみ」
 私は彼と自分に言って、そのまま瞳を閉じた。
 

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 あとがき。
 恋愛は非常に苦手ですが、「別れ」をテーマーに書きました。
 オフで辛いことがあったので、それがきっかでした。
 もっと勉強が必要だと痛感しました。恋愛は難しいです。
 読んでくださった方、有難うございました。

 2007/3/2

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