「ここにいるよね」
わたしはママとパパが通う学園の屋上の入り口に立っていた。
扉を開けようと、わたしは跳び跳ねてノブを掴もうとした。
でも、わたしの背が届かなくて、ノブは掴めない。
ここで諦めたくなかった。
扉の先に、わたしが会いたい人がいるかもしれないからだ。
わたしは扉を叩く。
「王おじさん!」
わたしは名を呼んだ。
わたしが会いたいのは、よく遊んでくれる王正義(おうまさよし)おじさん。
ママとパパと同じ仕事場にいる人なんだ。
体を動かすことを教えているためなのか、わたしと遊ぶ時は鬼ごっこやかけっこなどである。
王おじさんと遊ぶのは楽しいし、遊ぶのが終わるととっても寂しい。
王おじさんに会いたくなって学園近くにある幼稚園から抜け出すんだ。
足音がして、扉を開く音がすると、変わった髪型の男の人がわたしを見た。
「佳歩ちゃんじゃねーか」
「やっぱここにいたんだ!」
わたしは王おじさんの顔を見られて嬉しくなった。
王おじさんは屋上でよく"きゅうけい"しているからわたしの考えは合ってたんだ。
「幼稚園はどうしたんだ?」
「抜け出した」
「だめじゃねーか、勝手にいなくなったりしたら」
王おじさんは身を屈めてわたしを見た。
わたしは王おじさんに会いたくなって、先生の目を盗んで何度も幼稚園を抜け出している。
おじさんの言ってることは正しい。
抜け出したら先生やママ達が心配するからだ。
でも……
「だって……みんな寝てるからつまんないんだもん」
わたしは言った。
幼稚園ではお昼寝の時間で、友達の六花ちゃんも、真理子ちゃんも寝てる。
わたしはこのお昼寝の時間が嫌いだ。
寝てるのは退屈だから。
王おじさんは頭をいじり「仕方ねーな」と呟いた。
「お昼寝の時間が終わる頃には帰るからな」
「うん!」
わたしは王おじさんと一緒に屋上に入った。

時間が来るまでわたしは屋上で王おじさんと遊んだ。
その後幼稚園に帰り、先生に怒られたけど、ちっとも気にならなかった。

王おじさんと遊ぶ約束(今度の休みだけどね)をしたからとっても楽しみ。

早くお休みにならないかなとわたしは思った。


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