自分の名前の由来を聞いたのは、私が小学生の頃だった。
「ねえ、お母さん、何で私の名前は明美って言うの?」
私は本を読んでいたお母さんに訊ねた。
「私の名前の由来」という作文を書いて来なければならないからだ。
するとお母さんは私と同じ目線に身を屈めて言った。
「明美の名前はね、明美を産んだお母さんがつけたの」
お母さんは複雑な表情を見せた。
私は大人の都合で、今の家にいる。
お母さんは私が産まれた事に関わる話しになると、いつもその表情を浮かべる。
お母さんのそんな顔を見ていると、私は胸がちくりと痛んだ。
いつものお母さんなら見せないからだ。
「私の本当のお母さん?」
私が聞くとお母さんは「そうよ」と短く答える。
「明美の名前は『明るくて美しい人になれますように』って意味を込めて付けたのよ」
聞いている限りでは、素敵な言葉に感じた。
あかるくうつくしい……お母さんの穏やかな言い方もあってか、私の名前はいい名なんだと思えた。
名前の意味は分かった。
もう一つ疑問が沸き上がった。
「私を産んだお母さんに……いつか会えるかな?」
私が言うと、お母さんは私の頭を優しく撫でてくれた。
「明美が良い子にしてればきっと会えるわ」
「本当?」
「本当よ」
私はお母さんの言葉に安心した。
今は会えなくても、勉強を頑張って、友達と仲良くしてれば会える。
そう思った。
「私、良い子でいるよ!」
私ははっきりと宣言した。

私はお母さんの言葉を胸に、自分なりに努力した。
いつか私を産んだお母さんに会うために……

戻る

inserted by FC2 system