いつものようにロッカーを開けると
そこにあるべき物が消えている。
……おかしい、昨日まではあったのに。
一体何があったの?
訳が分からない。

頭の中には不安と焦りの感情がふつふつ……と湧き上がる。
これだけは言える。
誰かが持ち去ったんだ。
同じ名前の人と間違えたか、それとも隠したか。
前者ならまだいいが、後者だと気分が悪くなる。
教室の中に、心無い人間がいることが分かるからだ。
悲しくないと言うと嘘になる。
当事者を見つけて問い詰めたくなる。
「何でこんな事をしたのか」
胸倉を掴み上げて、相手が答えを言うまで放さない。
嘆いても仕方ないの、泣いても物が戻ってくることは決して無いからだ。
代用品でしのごう。人に借りるか。
周りの目が気になるが、恥ずかしがっていても仕方ない。
何もしないよりはマシだ。
休み時間に、念入りに探そう。
……無ければ高いけど買うしかないな。
足取り重く、教室へと歩いていった。

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