リンは校庭にあるベンチに腰掛け、ユラの上着のボタンをつけていた。
兄弟一緒に帰る途中(ラフィアは部活のため、一緒ではない)で、ユラの上着のボタンが緩んでいるのを、リンが気づいたためだ。
「悪いな、兄さん」
ユラはリンの横から、リンの様子を見る。
「簡単だよ、ユラにもできるよ」
「オレだったら呪文でサクッとやるけどな」
「何でも呪文に頼ったら駄目だよ、自分の手でできることは自分でしなきゃな」
リンは言った。リンが縫い物ができるのは母親の教育があってのことだ。
確かに、ユラが言うように天使が使用できる呪文があれば縫い物は簡単に終わるが、呪文に頼りきりばかりではいけないと感じている。
自分の手でできることは、できるだけ自分でやった方が良いと思っている。
「兄さんは考えが固いな」
「いいだろ、ほら、できたぞ」
リンはユラの上着を渡した。ユラは上着を受け取って、袖を通した。
「うわぁ、キレーな縫い方だな、直してくれてサンキューな」
ユラは嬉しそうに言った。
リンは弟を見て直して良かったと思った。

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