「あー楽しかったな」
ラフィアは頬を綻ばせながら言った。髪は左右に結い、左にはサンタ顔、右にはヒイラギの髪飾りを付け、後ろ髪は結ってはいない。
上下をうねるように飛んでいるため、髪は揺れている。
右手の紙袋には荷物で一杯で、中には天界の幼稚園での遊戯に使った紙芝居や人形が入っている。
「子供たち可愛かったな、大人になったら幼稚園の先生になりたいかも」
ラフィアはうっとりした表情で言った。
今日はクリスマスで、本当ならラフィアのクラスでは地上に行き人間との交流をする(リンは行っている)が、ラフィアは一年間地上に行くことを禁止にされているため、代わって幼稚園の子供の面倒を見る課題を与えられたのだ。
子供はラフィアの明るい性格も幸いしてかすぐになつき、ラフィアが用意してきた紙芝居や遊戯を楽しんでくれた。
「レポートは何とか書けそう、頑張るぞ!」
ラフィアは自分に言い聞かせた。帰ったら今日のことをレポートにまとめないとならないが、書きたいことが沢山あるので、レポートはすぐに仕上げる自信はある。

「たっだいまー!」
ラフィアは自宅の扉を開き、明朗な声で挨拶した。
「お帰りなさい」
母親のロウェルは机にフォーク、ナイフ、スプーンを置いている。
「お母さん、今日の夕飯は何?」
ラフィアは目を輝かせて訊ねる。今日はクリスマスなのでご馳走が出るはずだ。
「今日はローストチキンとポタージュとカレー、デザートにはチョコケーキよ」
「やった!」
豪華な献立にラフィアは両手を上げて興奮した。ロウェルの手作り料理はどれも美味しいからだ。
献立を聞いてるだけでお腹が空いてきた。
ラフィアがはしゃいでいると、ロウェルが近づいてきた。
「その髪どうしたの?」
ロウェルが訊ねてきた。外出する時と髪型が違うことに気づいたのだ。
ラフィアは左右の髪飾りを触る。
「幼稚園の子供に結ってもらったの、お風呂に入るまでとらないって約束したんだ」
ラフィアは優しい声で語る。
左右の髪飾りが違うのはサンタが好きと、ヒイラギの実が好きな女の子がどちらの髪飾りでやるか喧嘩になってしまい、二人の意見を大切にしたくて左右違う髪飾りになったのだ。
髪飾りが違っているため、天使の目が気になったが、付けてくれた二人の女の子の気持ちを考えると外すことはできなかった。二人の女の子は一生懸命にやってくれたのだから、二人の気持ちを守りたかった。
「可愛いじゃない」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ロウェルに誉められ、ラフィアは照れる。
ロウェルは一緒に暮らしている幼馴染みのリンの母親でラフィアと血の繋がりはないが、ラフィアにとって実の母親と言っても良いくらいだ。
ロウェルの「可愛い」はラフィアにとって安らぎを感じた。
「お母さん、レポート終わったら手伝うから!」
照れ臭さを誤魔化すためラフィアは言った。献立が多いので一人では大変だと思ったのだ。
「まあ、有難う、それならチョコケーキの切り分けをお願いしようかしら」
「じゃあ、チョコケーキができるまでにはレポート終わらせるよ!」
ラフィアははつらつとした声で言うと、子供に結ってもらった髪を揺らして、自室へと駆け込む。
今年のクリスマスは幼稚園での出来事や母親に髪型を誉めてもらったことなど、色んな意味で思い出に残るクリスマスだった。


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