イロウは玄関で妻子と外出前の会話を交わしていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「ええ、気を付けてね」
オリビアは温かな笑みを浮かべる。
オリビアの横にいたエイミーは呪文をかけて動かした一体のライオンのぬいぐるみ(アパシと言うらしい)と共に一歩前に出た。
イロウがホワイトデーの時にあげたものだ。
「行ってらっしゃい! パパ! お仕事頑張ってね!」
エイミーは朗らかに言った。
イロウはエイミーの頭を優しく撫でる。
「呪文の使い方に気を付けるんだぞ、ママを困らせたらダメだからな」
「分かってるよ」
エイミーは少しむっとした口調になった。ここの所エイミーは呪文で草や花を動かす遊びに夢中になっている。
しかし、つい先日、自分の力を試したくて、毒の異常呪文を使い友人にぶつけた騒ぎをおこしてしまい、友人の両親にオリビアと謝罪しに行ったことは記憶に新しい。
友人はミルトの薬草により回復し、友人の両親も許してくれた。
なのでエイミーには呪文のことで注意するのだ。
「キヲツケテイッテキテキテクダサイ、ブジヲイノリマス」
エイミーの隣にいたアパシが右手を掲げて喋った。エイミーの呪文の影響だ。
アパシにも挨拶しないと、エイミーは不機嫌になる。エイミーいわくアパシは自分の弟だという。
「ああ、行ってくるよ、お姉ちゃんと仲良くな」
「エエ、オマカセクダサイ」
アパシはかしこまった。
イロウは妻子に笑いかけて、玄関を後にした。


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