「お前の母親から送られてきたものだ。クリスマスの贈り物だろうな」
「有難うございます。部屋で確認してみます」
叔父のガロから箱を受け取り、ナルジスはガロに背を向けた。
ガロはナルジスの面倒を見てくれるが血の繋がりはない。なので他人行儀で接しているのだ。

ナルジスは自室の机に戻り、箱を置く。
「……今回は何を送ってきたんだ」
ナルジスは箱のラッピングを解き、箱を開いた。中には、分厚い辞典、白い羽根、手紙が添えられていた。
ナルジスの実母はクリスマスにプレゼントを送るのだ。
ナルジスは家庭の事情で今住んでいる親戚の家に引き取られたのだ。しかし実母はナルジスのことを気にかけているのか、クリスマスや誕生日にプレゼントを手紙と羽根付きで送ってくる。
実母は写真で見たことがあるが、綺麗な女性だった。
「……送るくらいなら、会いにくれば良いものを」
ナルジスは憂鬱げに呟く。
ガロに引き取られてからは実母に会っていない。
ガロの話だと、両親の家は色々と問題があるらしく、ナルジスが両親に会うのは難しいのだ。
「いや、会うのはやめた方が良いのかもな」
ナルジスはガロの話を思い出して、軽く首を振る。 両親に会うとするなら成人と認められる十八になってからだ。
手紙を開くと、ナルジスの体を気遣うこと、来年の一人前の天使になる試験の合格を願うことが書かれていた。
読んでいて、母の愛が文面から伝わってくる。
「辞典は……来年に使えそうだな」
ナルジスは辞典の表紙を見て言った。辞典は机についている本棚に置く。
白い羽根は実母のものだ。天使が羽根を入れるというのは敬愛の証である。ナルジスはクローゼットにある羽根を入れる箱にしまった。
母親の羽根は一杯になり、そろそろもう一つの箱が必要になる。手紙の箱も同様だ。ナルジスは送られてきた両方を大切に保管している。
躾に厳しいガロも、実母に会えないナルジスの心境を考えてか、玩具は捨てるように命じても母の愛が詰まった箱を捨てろとは命じない。そこは少し安心した。
玩具は呪文で作れるが、羽根や手紙は作れないからだ。
「手紙の返信はしておくか」
ナルジスは席につき、実母に向けて手紙を書いた。


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