「あーあ、またテストの点悪かったな」
ラフィアは落ち込んだ表情を浮かべていた。
「勉強してれば簡単だよ」
「そうは言うけど苦手なんだよ」
リンの簡単は、ラフィアの大きな壁である。
二週間後には、 天使昇給に関わる試験もあるので更に憂鬱だ。
「協力するから頑張ろうよ、君が一人前の天使になれなかったら心配だからさ」
リンの力強い言葉は、ラフィアの心を奮わせた。
「……本当?」
ラフィアの問いかけにリンは「うん」と頷く。
リンはラフィアがピンチの時に助け船を出してくれるので、有り難かった。
「あっでも、真剣にやるからそのつもりでいてね」
「分かってるよ」
ラフィアの声は明るくなった。憂鬱が少しだけ無くなった気がした。
「なら……」
ラフィアは言ってテストの答案用紙を鞄から取り出して、空に放り投げた。
そして右手を掲げ、炎の玉を放つ。
「ウジウジ君ともサヨナラだねっ!」
炎の玉はテストの答案用紙に当たり、答案用紙は灰となった。
「どう? 炎の玉凄いでしょう」
ラフィアは自慢気に口走る。
炎だけでなく氷や雷なども出せるのだ。
学校でも攻撃呪文は学ぶが、ラフィアは上の学年で習得する攻撃呪文を勉強している。
リンに助けてばかりでは嫌なので、できる事をしたいと思ったことがきっかけだった。
努力のお陰か、攻撃呪文に関してはリンに負けていないつもりだが、学業はさっぱりである。
「ダメだよそんな事したら!」
リンは注意した。
「だって、嫌なものは嫌なんだから」
ラフィアはきっぱり言った。
テストの結果だけで決められるのは嫌である。
「炎の玉の威力上がってたよね? 前なんか半分しか燃えなかったし」
ラフィアは自信に満ちた声を発した。
前にも一度練習を兼ねて紙を燃やしたが、今回のように全部は燃えなかったのである。
「だからってテストを燃やして良い訳ないだろ」
リンの声には怒りが含んでいた。
リンに認めて欲しいのに、思うようにならないのが歯がゆい。
「余計怒られても知らないよ」
「平気……だもん」
厳しいリンに、ラフィアは不安になってきた。
だが、燃やしてしまったものは復元できない。復元の呪文が無いからだ。
「僕も一緒に言ってみるけど、ちゃんと謝るんだよ」
「分かった」
謝る相手は勿論母親である。
燃やしたと聞けば怒るだろうが、仕方がない。
家に帰り、リンが言っていたように叱られたが、リンが側にいてくれたお陰であまり怖くはなかった。


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