明は壁際にいる男子生徒を睨み付け、胸ぐらを掴んでいた。
「おい、テメェ、金持ってんだろ?出せよ」
明はドスの効いた声で相手を脅す。
明は構内でも有名な不良で、度々問題を起こしては停学沙汰を起こし、教師の間からも、問題児扱いされている。
男子生徒に絡んだのは、お金欲しさだけでなく、ストレス発散も兼ねている。
「持って……いません」
男子生徒は歯をカチカチと鳴らして訴えかけてきた。
彼の気弱そうな態度が明の怒りに拍車をかけた。
明は男子生徒の右頬に一発打撃を与えると、再び胸ぐらを掴む。
「うるせぇっ!よこせる分をよこしやがれ!」
「やめてっ!」
甲高い声が、明の鼓膜に響いた。彼が幼い頃から良く聞いている人物のものだ。
明が振り向くと、明の幼馴染みの翔子が立っていた。
「明くん、どうしてこんな事するの?」
翔子は不安げな表情を浮かべている。
翔子は自分と違って成績優秀で、教師の間からも期待されている。
「お前には関係ねぇだろ」
明は翔子を突き放すように、刺々しく言った。
こんな自分と翔子が釣り合わないからだ。
「明くんだって、本当はしたくてしている訳じゃないんでしょう」
翔子の言葉が、明の胸に突き刺さる。
家ではいつも出来の良い弟と比較され、居場所が無いと感じ、外で弱い立場の人間を捌け口にする。
そうすることで、自分の心を保っている。
かと言って、もう引き返すことはできない、明を恨む人間は数多く存在するからだ。
明は手を強く握った。
「俺のことは放っておけよ」
明は翔子と顔を会わせずに、その場を去った。












あとがき
明美「……ねぇ」
なに?
明美「あなた私に何させたいわけ」
『もし明美と翔太が性転換したら』という妄想から生まれました。
明美「だからってどうして男の子になった私があんな柄悪いの?」
単に性転換しただけじゃ面白くないから、性格も正反対にしたのです。
翔太「オレ、頭が良くなってる! これならあけみんに頼らないで済むぜ!」
明美「翔太くんは元の私に近いからいいな」

という訳で性転換ものを書きました。
明美→明
翔太→翔子です。

二人のことは「絆は途切れ」を読んで下さい。
今後とも本館を宜しくお願いします。

戻る


inserted by FC2 system