空が晴れ渡り、肌寒さが残る中、スピカは公園を散歩していた。
「先輩、今日は出掛けるにはいい天気ですよ」
スピカは独り呟く。
姿が無くても、クラウが近くにいる気がしたからだ。スピカは湖が見える場所に来て、立ち止まる。
「ここでプレゼントを貰ったんですよね」
スピカは湖を眺めた。
スピカの頭にはクラウから貰った赤いリボンが結ばれていた。
クラウの夢を見て以来、徐々にではあるが、元気を取り戻していった。
食欲も回復し、引きこもりっきりの日々から脱出し、今では外出できるようになった。
腰までかかる位に伸ばしていた髪も、気分を変えたいと思い、切った。
今日はクラウの墓参りに行き、その帰りである。
「明日は仕事復帰します。いつまでも悲しんではいられませんからね」
スピカは頭のリボンに触れる。
リボンはこれからも大切にしていく。
スピカとクラウを繋ぐ思い出だからだ。
そんな時だった。柔らかな風が吹き、肩まで切り揃えた黒髪がなびいた。
「……!?」
ふと背中に温もりを感じた。
『いつも君の側にいるからな』
愛しい人の声がはっきりと聞こえた。
「はい……」
スピカは返事をした。
温もりは風と共に消えた。
「先輩……また会いましょう」

スピカは公園から去っていった。
さよならは言わない。また会える気がしたからだ。

そう遠くない未来に。

end


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