クラウは青い顔をして横たわっていた。
頭が痛くて、立ち上がれない。
「大丈夫ですか?」
スピカが心配そうな表情でクラウを覗き込む。
「ああ……」
クラウは薄っすらと目を明ける。
ジャドーとお酒を飲みすぎてしまい、二日酔いに陥ってしまったのである。
クラウはお酒は好きなので、つい調子に乗ってしまった。
「すまないな……君にも迷惑をかけて……」
クラウは見舞いに来たスピカに謝罪した。
スピカはジャドーとモイラと共に来た。
「良いんです。困ったときはお互い様ですから」
スピカは土鍋を持っていた。
中からは香ばしい匂いが漂ってくる。
「先輩、食べられますか?」
「何とかな……」
クラウは返す。
スピカが鍋の蓋を開けた途端に、白い湯気が出た。
「モイラさんが作った薬草のお粥です。食べると二日酔いが消えるそうです」
スピカは言った。
モイラは料理が上手で、一口食べるとおかわりが欲しくなるほどだ。
「二人は?」
さっきまでいた二人の姿が無く、クラウは疑問を抱いた。
「帰りました」
「そうか……」
スピカはお粥をすくい、クラウの口元に差し出した。
本当なら立ち上がって食べたいが、頭痛が酷くてそうもいかない。
「どうぞ」
「ああ……いただくよ」
クラウはお粥を少し食べた。
薄味で、食欲が無い時には丁度良い。
「美味しいな」
クラウは感想を述べる。
流石はモイラの料理だと率直に思った。
「もっと食べますか?」
「頼もうかな」
クラウはスピカから差し出されたお粥をその後も残さず食べた。
頭の痛みはまだ引かないが、スピカと過ごす時間をもっと嚙締めたいと思った。
「全部完食しましたね、この分じゃ明日には治りそうですね」
スピカは満足げな表情で言った。

(こうして彼女と一緒にいると落ち着くな)
クラウは思った。

二人きりの時間は、穏やかに流れていった。

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