明美は翔太と共に草むらに転がっていた。
空は夕焼けに染まり、夜の色が混ざっている。
「今日も楽しかったね」
明美は空を眺めて呟く。
そろそろ帰らないと家族に心配されるが、二人はまだ帰る気はない。
「あけみん、足速くなったよ」
翔太は明美に目を向ける。
今日は近所の友達と缶蹴りをして遊んだ。
逃げ回ったため、二人は汗をかき、明美は逃げた際に転倒して服が汚れてしまっている。
親に叱られるだろうが、それでも構わない。
翔太達と遊ぶのは楽しいからだ。

「自覚ないわ」
「この調子で足が速くなれば、かけっこでも一番になれるよ」
翔太のほめっぷりに、明美は恥ずかしさと嬉しさで顔が赤くなった。
明美は勉強はできるが運動が苦手で、特にかけっこは必ず最下位である。
翔太のように運動神経が良い子が羨ましい。
「翔太くんには叶わないけどね……空手のほうはどう?」
明美は首をかしげた。
小学校に入学してから翔太は空手を習い始めたと聞いたからだ。翔太と過ごす時間はこの所少なくなってきている。こうして遊べるのも貴重である。
そのため時間ギリギリまで一緒にいるのだ。
「すっげー楽しいよ、この前なんか上級生を倒せた! 今度はもっと年の離れた人と対戦するんだ!」
翔太は明るく語った。
前のおどおどしていた彼からは考えられない変わりっぷりだ。
小学校に入学してから、彼は友達をたくさん作り、休み時間は外で遊びまわっている。
翔太と同じクラスで見ている明美としても、翔太の変化に安心した。
「今度翔太くんの道場に行ってもいい?」
明美は聞いた。
翔太がどれくらい強くなったのか実際に見てみたいからだ。
「いいよ、緑ちゃんも連れてきてよ」
緑とは明美の妹である。
「緑に聞いてみるね、あの子慣れない場所に行くのを怖がるから」
「りょーかいっ!」
翔太は元気よく立ち上がる。
「そろそろ帰るよ、あけみんまた明日な!」
「じゃあね、翔太くん」
明美は翔太に手を振った。

明美は帰り道、翔太と遊べる日が来るのが楽しみだった。
彼との思い出はこの先も作られていった……

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