皆楽しそうで、昇もつられて笑顔になった。
教師になってさほど経ってないが、生徒が笑ってるのを見ると、やってて良かったと心底思った。
「ちょっとしみるけど我慢してね」
女性の声がして、昇は足を止める。
輝宮が男子児童の足の手当てをしていた。
「えっ……えっ……」
「良くなるから大丈夫よ」
泣く男子児童を輝宮が宥める。
輝宮は真面目で生徒思いの先生として評判だが、男子児童を介抱しているのを見て彼女の性格がよく現れていると思った。
(輝宮先生は教師の鑑だな)
昇は感心した。
「なーにしてんだよ!」
背後から王の声と共に、軽く背中を叩かれる。
「王先生……」

昇の前に特徴的な髪型の男性が立っていた。

体育の先生の王正義(おうまさよし)である。
「仕事しねーとかがみんに怒られるぞ!」
王ははりきって言った。
王はしょっちゅう仕事をさぼり、輝宮に追いかけまわされているので説得力に欠ける。
だが一応は先輩なので言葉を飲み込んだ。
「はい……気を付けます」
昇は短く言うと、王に背中を向ける。
花火が宙に浮かぶ中、昇は輝宮のことを考えた。
輝宮とはあまり接点が無かったが、彼女の優しい部分を目の当たりにして、意識が変化した。
(今度食事に誘ってみようかな)
昇は決心したのだった。

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