「今年は遅刻なんてたるんでるんじゃないのか?」
「しょうがないでしょ、色々忙しかったんだし」
サンタクロース姿のソルテは相方の袋ことふっくんに文句を言いながら薄暗い廊下を進む。
今日は十二月二十七日、クリスマスから二日過ぎている。
「だからってクリスマスを忘れんなよな、プレゼントを待ってる子どもががっかりするだろ?」
「分かってるわよ」
ソルテは声を抑えて反論した。
ここは病院と呼ばれる病気や怪我の人を治す場所なので大声で騒いではいけないからだ。
ソルテもソルテで好きで遅くなった訳ではない、子どもに与えるプレゼントの量が多かったため詰め込むのに時間がかかったのだ。
去年はクリスマスに配れてたので、今年はたまたま遅れてしまったのだ。
他のサンタクロースに散々言われへこみそうになったがプレゼントは何とか配り終え残るは最後の一件のみである。
「ここね」
ソルテは番号と名前の書かれた部屋の前に立つ。
プレゼントを渡す相手のプロフィールの紙をソルテは見る。
名前は音無 叶祐(おとなし きょうすけ)といい、目の前に記されている名と一致する。
「うん、間違いないわ」
紙をポケットにしまい、ソルテはゆっくりと扉を開く。
「お邪魔します」
ソルテは小さな声で言い、静かに歩く。
音無の周りには機械というものが置いてある。
「うわ……」
ソルテはその様子に困惑する。
「音無ってヤツは相当重い病気のようだな」
ふっくんは言った。
「ビョウキ?」
聞きなれない単語にソルテは首を傾げる。
ソルテを含むサンタクロース族は怪我はあっても病気はないからだ。
「ああ、ソルテは知らないんだったな」
「教えてよ、ビョウキって何?」
「病気っていうのは人間の体や心の不調だ。音無は体の不調が重い」
ふっくんは真剣に言った。
ふっくんは人間世界のことに詳しく、ソルテが知らないことを教えてくれるのだ。
ソルテが初めて来ることになった病院のルールを知ることができたのもふっくんのお陰だ。
「大変なの?」
「そりゃ大変だ。ソルテがクリスマスプレゼントを毎日配るようなもんだ」
クリスマスのプレゼントを配るのは大変なこともある。犬に追いかけられたり、時には崖っぷちを歩いたりと困難も付きまとう。
今眠っている音無は人間ならではの苦難と向き合っているのだ。
ソルテはふっくんを地面に下ろした。
「ふっくん、音無くんのプレゼント出して」
「おう」
ふっくんが声を出すと、袋の口が勝手に開き一つの箱が現れた。
ソルテは箱を手に持った。
「音無くんにサンタさんからプレゼントだよ」
ソルテは音無の枕元に箱をそっと置く。
中身は音無が欲しがっていた歴史本である。
「頑張ってね、応援してるよ」
ソルテは音無に声をかけた。

病院を出てソルテはソリに乗り、帰る場所であるクリスマスの世界へ向かった。
「何とか配り終えたね」
「本当だな」
「ねえ、一つ聞いて良いかな?」
「どうしたんだ」
「音無くんのビョウキってどうなるのかな」
ソルテは音無のことが気になった。
「さあな、それは運命次第だろう」
「ビョウキが無くなるか分からないの?」
「あのな、病気は無くなるじゃない、治るか治らないかだ
音無の病気が治るのかはオレにも分からん」
「そうなんだ……音無くんのビョウキが治るといいな」
ソルテはしんみりした。
今まで多くの子どもにプレゼントを配ってきたが、音無のように重い病気の子どもは初めてだからだ。
話していると雪がちらついてきた。
「雪だ……」
ソルテは片手を宙に掲げた。
雪は掌に落ち、水滴となった。
「今日は降るって言ってたからな」
「音無くんも見てるかな?」
「朝まで降れば見るかもな、それより早く帰ろうぜ腹減っちまったよ」
「分かったわ」
ソルテは鞭を叩き、鹿を急がせた。
年に一度のクリスマスプレゼント配りは無事に終わり、ソルテとふっくんは仲間であるサンタクロース族のいるクリスマスの世界へと帰った。

その後風の噂で音無が病気を治したと聞き、ソルテはほっとしたとか。


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