桜の木を、スピカはじっと眺めていた。
桃色の花びらが宙を舞い、とても綺麗に見える。
「……今年も見られたね、桜」
スピカは隣の夫に問いかけた。
「ああ、今年も素晴らしいね」
夫は口元を緩めた。
こうして花見に来るのは、夫が一緒になってから毎年恒例である。
「子供もずい分大きくなったね」
「来年は三人で見られるわ、その日が楽しみね」
二人は顔を合わせ、微笑んだ。
スピカのお腹には新しい命が宿っており、今年の冬には生まれる予定である。
夫はスピカのお腹に手をそっと触れる。
「元気に育つんだぞ」
夫は子供に語りかけた。

二人の春はこうして穏やかに過ぎていった。
温かく、そして優しい時間だった……

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