私には夢があった。
人に夢を与える仕事に就きたかった。
そのために、私は必死だった。

「これ、読んでみて」
私は完成した原稿用紙を親友に見せる。
彼女は高校に入ったときにできた友で、一緒に遊ぶのは当然だが、作品の的確な評価をしてくれる。
私は彼女を信頼していた。

そんなある日の事だった。些細な事で喧嘩をしてしまった。
彼女の口から、私の心を砕く言葉が出る。
「あなたの絵は子供っぽいし、物語も在り来たり、はっきりいって雑誌に投稿するのは早すぎるのよ! 読まされるこっちの身にもなってよ!」
頭が真っ白になった。
今までやってきたことを全て否定された気がした。

その後、彼女は謝罪したが、もう彼女とは付き合えなくなった。
喧嘩の際に出た言葉が、私の中でしこりとなったからだ。
重いスランプに陥り、物語を練ろうとしても、彼女の言葉が過ぎり何も浮かばなかった。

私は必要な道具を全て処分した。もう何もかもどうでも良くなってしまったからだ。
その後、私は勉強に打ち込んだ。
心の痛みを晴らすように……

それから数年後。

「おねーちゃん、お話作って」
私は、十歳年の離れた従妹にせがまれた。
昔の話をした所、興味を持ったのである。
……従妹の目はきらきら輝いていた。

私の物語を聞きたい人がいる。
心の痛みはまだ完全には癒えてない。
それでも
従妹の悲しそうな顔を見たくない。

この子の喜ぶ顔が見たい。
私は決めた。

「分かったわ、一緒に作ろう」
「うん!」

私は笑いかけた。
もう一度物語を描こう、今度は従妹のために。
たった一人のために。

夢は形を変えたが。
再び動き出した。

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