目を開けると、見慣れた天井があった。
俺は起き上がって周囲を辺りを見回し、そこが自分の部屋だと理解した。
「今……何日だ?」
俺は机にあるデジタル時計を確認する。
三月二十五日、俺が死ぬ前日だ。
「凄いな、あのみけ猫」
俺は言った。
『みけ猫ではない、みけ神じゃ』
「うわっ!」
頭の中に声がして驚きのあまり俺は後ろに下がった。
姿は見えなくてもどこかで俺を見てるんだな。
俺は神様とか信じなかったが、俺を生きるチャンスをくれたからちょっとは信じようと思う。
『ワシはこれで帰るが、命を粗末にするなよ
家族を悲しませるんじゃないぞ』
「分かってるよ、サンキューな神様」
俺は礼を言った。
すると気配は消え去っていった。役割を終えた神様は帰ったって訳か。
俺は締め切られたカーテンを開くと、目映い光が差し込んできた。
「太陽ってこんなに綺麗だったんだな」
俺は感動した。
受験が終わり精神的な負担が減ったってのと、生き返ったこともあるからだな。
「大雅、そろそろ起きなさい!」
母さんの声が飛んできた。
母さんは仕事に行く前に俺を起こす習慣がある。
あの時の俺は寝たふりをしていたが、今は違う。
母さんの見えない部分を知ってる。だからいらついたりはしない。
俺は部屋を出て母さんのいる玄関に行った。
母さんは靴を履きいつでも外出できる状態だった。
「おはよう、仕事大変だろうけど無理しないでくれよ……それと」
俺は言葉を続けた。
「俺のために頑張ってくれて有り難う」

俺の言葉に、母さんは戸惑った様子だった。
俺はみけ猫……いやみけ神のお陰で人生をやり直すことができるようになった。


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