―――回れ回れメリーゴーランド。
 私の憂鬱も吹き飛ばして欲しい。
 
 少女は白馬の背に乗り、黄金の取っ手をしっかり握り締める。
 しばらくすると、けたたましいベルの音と共に、メリーゴーランドは動き出した。
 観覧車、子供達に風船を配るうさぎの人形、列を作るファーストフード店、頂上にまで登りつめたジェットコースターが素早く通り過ぎ、もう一つの世界に見える。
 「きゃははっ! たのしーい!」
 後ろから子供がはしゃぐ声が入った。
 ……本当ならば楽しくて仕方ないはずだが、少女の心は沈んだままである。
 思い出すだけで胸が焦げそうなほどに痛む。
 片思いの相手に、勇気を振り絞って告白したが玉砕。入学した時からずっと好きな相手だっただけに失恋の痛手は大きい。
 少女は横をそっと見ると。そこは空席だった。本当ならば恋人が座っているはずだった。
 彼の笑顔が。 
 手の暖かい温もりが。
 少女の側には無い。
  少女の心を更に痛めつけたのは、笑い合う若い男女のカップルだった。二人で楽しそうに談笑している。
 ……羨ましいな。私もあんな風に笑いたい。
 友達は皆、彼氏を作り充実した日々を送っている。
 残されたのは自分だけで寂しさが日に日に積もる。
 ……あーあ、気晴らしに遊園地に来たのはいいけど、逆効果だったかな。
 少女は単身で遊園地に来たことを後悔した。失恋の憂さ晴らしのために楽しもうと思ったのだ。ジェットコースター、コーヒーカップ、観覧車、お化け屋敷。
 どれを回ってもちっとも楽しくない。澄み渡った空も綺麗だと思えない。
 全てがつまらない。
 少女が最も気に入っているメリーゴーランドに乗っても、気持ちはすっきりしなかった。
 ……遊園地に遊びの神様がいれば、きっと怒るだろうな。
 少女は溜息をつく。これで何度目の溜息だろうか。
 メリーゴーランドの速度がゆっくりと落ちていった。もう終わりのようだ。少女は地面に降り立ち
重い足取りで、その場を去った。
 ……今度メリーゴーランドに乗る際は、彼氏と一緒がいいな。
 歩きながら少女は思った。

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