空は夜に包まれ、上着を羽織っていても寒さを感じるほどに気温が低い。
 寒い中、私は自室でテレビを見ながら、時刻が来年になるのを待っていた。
 「りかこ、もうすぐ来年になるよ」
 私は一人の名を呟く。
 りかことは十一年間一緒だった友達で、一ヶ月前に交通事故で亡くなった。彼女とは仲たがいしたままで未だに謝罪できなかったことが悔やまれる。
 りかこのことを考えるだけで胸が潰れそうなほどに痛い。
 私はふと部屋の中心を眺めた。去年はこの部屋でりかこと二人っきりでトランプをやって時間を潰していたのを思い出したからだ。
 『やった! 私の勝ち!』
 『めぐ、ババ抜き強いね』
 『りかこが弱すぎるんだよ、もっと私を負かすぐらいに奮闘しなきゃ』
 『言ったな、次は絶対勝つ!』
 結局、りかこは一度も勝てなかったけど、一緒に遊べて楽しかったな。
 カウントダウンは一緒に数字を数えて。
 年越しそばを一緒に食べて。
 そしてその後一緒に眠ったよね。
 でも、今はりかこはいない、私と一緒に遊ぶ事も、年越しすることも永遠にない。
 時計は二十三時五十九分、もうすぐ来年がこの世界にやって来る。同時に高校受験による忙しい日々が。これからは私一人で苦難や試練に立ち向かわないとならない。完全にひとりぽっちではなくても、事実上では私だけの力で問題を解くことになる。
 不安と緊張の中、テレビの中では司会者や芸能人が一緒になってカウントダウンを始める。
 五……四……
 私はりかこと私自身が写る写真をテレビに向ける。例えこの場にりかこがいなくても一緒に年越しを迎える気持ちでいたいから。
 二……一……
 テレビの中では、新年を祝う花火が空を飛び、皆が一つになって「あけましておめでとう!」や「今年もよろしくお願いします!」と言って騒ぐ。
 しかしテレビの外にいる私は別だ。私はりかこの写真に話し掛けた。
 「あけましておめでとう、りかこ」
 私は小さく微笑む。
 静かで、悲しみを含んだ年明けだった。

 −−−−−−−−
 あとがき
 新年に関する話を書きたいと思い執筆しました。
 この時のめぐみはりかこを失った傷は癒えていません、その中を生きるめぐみの姿を描いてみました。 
 しかし私が描く小説はどうも暗い傾向があるようです。
 見てくださった方、有難うございます。

 07/1/1

  

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