風紀委員は少女と語る。 作者:ねる

静まり返った明美の部屋に、突如音が鳴り響く。
明美は薄っすらと瞳を開き、ベットの近くに置いてある携帯に目を向ける。
時間を見ると午前一時、眠っている時間帯なので迷惑極まりない。
「…誰かしら」
眠い目を擦り、明美は携帯電話を手に取る。
液晶には「虚首楼蘭」と書かれている。
「虚首さん…?」
明美は携帯のボタンを押す。
「はいもしもし、星野ですけど」
明美は敬語交じりで相手に言った。
『調子はどう?すこぶる悪いって聞くけど?』
想像通り楼蘭の声が、明美の携帯からした。
一体何の用だろうか?
本来なら風紀委員の肩書きにかけて注意している所だが、眠気のためそこまで頭が回らない。
「虚首さん?こんな時間にどうしたの?」
明美は訊ねる。
彼女が夜中に電話をしてくるなど無いからだ。
『起しちゃったかしらごめんなさいね…この時間にしか空きが取れなくって。』
楼蘭は言った。
彼女の「すこぶる悪い」と言うのも慧のことだ。
前にも一度彼のことで、楼蘭からアドバイスを受けたことがある。
楼蘭との会話をぼんやりと思い出し、明美は口を開く。
「あなたの言いたい事は前にも言われたから分かってるつもりよ。肩の力を抜け…でしょ?」
深呼吸して、明美は瞳を閉じた。
『分かってるならいいんだけど…じゃ、あと一つアドバイス追加ね。
木々を見て森を見ないって言葉があるわ…
細かいところに目がいって大局を見ないって意味なんだけど、
アンタはその逆、大きなところに目がいきすぎじゃない?
小さな事からコツコツってのもいい物だし…何よりあれに固執し過ぎだと思うわ。』
楼蘭は長く語る。
彼女の「大きなところ」とは慧の暴力のことだ。
「でも…暴力を見過ごすわけにはいかないわ」
明美は強く言った。
楼蘭の会話は、意味深で理解するのは難しいが、慧の行動を見過ごすことはできない。
『その暴力をアンタが喰らってちゃ意味無いって言ってるのよ。ま、ほどほどにね。人生はたったの一回よ。』
一方的に楼蘭の電話は切れた。
明美が口を挟む隙が無かった。
「どういうことかしら」
明美は横になって呟く。
楼蘭の話からして、彼女は明美の行動を把握していることが伺える。
聞いたことのある話だが、楼蘭は【子供達】と呼ばれる盗撮盗聴器を学校中に取り付けているという。
明美が知らない間にも、楼蘭に監視されていることになる。
すぐに考えるのを止めた。欠伸と共に猛烈な眠気が明美を襲ったからだ。
明美は瞳を閉じた。
楼蘭の言葉を胸に刻んで…


風紀委員は後輩と話す 戻る 風紀委員は困惑する
inserted by FC2 system