そして私ができること 作者:ねる

屋台の射的に雪乃はいた。
最初に雪乃が狙ったのは、明美が欲しがっていたiPodで、外れることなく打ち落とした。
「毎度あり」
「どういたしまして」
景品を店主に渡され、雪乃は満足そうである。
雪乃の腕は、射的で大いに役立った。


明美は夜の夏祭りを休んだ。
理由としては、酷い顔で夏祭りを回りたくないのだという。
雪乃も同じ女子として明美の気持ちを汲み取ることにした。
iPodは明美への手土産ということになる。

 

次に向ったのはりんご飴の店で、二つ購入し、高等部校舎の屋上へと向った。
屋上の扉を再び叩き、中に主がいるかを確認した。
「いるから入ってらっしゃい」
雪乃はドアノブに手をかけて扉を開く。
昼間と同じく楼蘭と言流がそこにいた。
「ようこそ、今日で二度目ね」
「りんご飴買ってきたわ、良かったら食べる?」
雪乃はりんご飴を二本出した。すかさず反応したのが言流だった。
「わぁ! りんご飴だ!」
雪乃の元に来て言流は一本手に取る。
「雪乃先輩、有難う!」
「言流、アタシにも持って来て」
「はーい!」
二本のりんご飴を手に持ち、言流はノートパソコンをいじっている楼蘭に駆けつけた。
雪乃はそっと二人の側に近づく。
言流は楼蘭の様子を眺め、見られている本人はノートパソコンで夏祭りの状況を確認している。
「それで、用件は何かしら?」
楼蘭はノートパソコンを見たまま、問いかけてきた。
雪乃は思い出したように、口を開く。
「虚首さん、明美ちゃんを助けてくれて有難う」
雪乃は頭を下げた。
丁度花火が上がったようで、屋上には彩り豊かな光が映し出される。
「昼間にも明美が来て、礼を言ったわよ、アンタまで来る必要あったの?」
「どう思ってくれても構わないわ」
楼蘭の言うことは間違ってない。
明美が礼を言えば、それで十分なはず。
だが雪乃は性格上、どうしても礼を言わなければ気が済まなかった。
「じゃあ、私行くね」
雪乃は一声かけて、屋上を去った。

 

花火が上がる中
雪乃は明美が待つ寮へと戻った。



2 戻る

inserted by FC2 system