そして私ができること 作者:ねる

雪乃は茄奈と共に、獣道を進んだ。
鬱蒼と緑が覆い、どこまでも続いている。
「二人はどこにいるのか分かる?」
茄奈は訊ねた。
彼女の服装は黒色のメイド服でねこみみである。
雪乃が事情を説明すると、そのままの姿で雪乃についてきたのだ。
「はい、本殿にいると虚首さんから聞きました」
茄奈は雪乃に視線を向ける。
「しかし、何たって伊澄は星野に絡むんだ?」
「それが……」
雪乃は茄奈に説明をした。
明美が蛇を慧に見せたことから、全てが始まり、明美は慧と接点を持つようになってしまったことを。
説明が終わると、茄奈は困った表情をした。
「成る程、それは星野にも分があるな」
「明美ちゃんもきっと懲りたと思います」
茄奈の言い分に、雪乃はすかさずフォローを入れた。
「話しは置いといて、問題はどうやって星野を助け出すかだな」
茄奈は腕を組んで考えた。慧から明美を救出するのは、慧の性格からして容易なことではない。
「その事ですけど……」
雪乃はポケットから小型の拳銃を取り出した。
見た瞬間、茄奈は驚きの表情に変わった。
「倉木……それ」
「驚かせてしまいましたね、エアガンです」
雪乃はエアガンの銃口を下に向ける。
雪乃が持っているエアガンは黒い外観で人から見れば、言葉にできない威圧感を発揮する。
「私、こう見えて、エアガンには自信があるんです」
そう言うと、雪乃は狙った葉っぱや草を撃ち抜いた。
どれも的確で、外れがない。
茄奈は口を半開きにした。
「以外だな、倉木にそんな特技があったなんて」
「私はいらないんですけどね」
雪乃は苦笑いを浮かべた。明美がいたらきっと注意されていただろう。
「話を戻しますね、まず私が伊澄の気を反らしますから、その間に、阿部さんは明美ちゃんを助け出して下さい」
雪乃は真剣に言った。
茄奈を連れて来たのは、運動神経の良さを踏まえての事だ。
「……倉木は大丈夫なのか? いくら星野を救えたとしても、倉木に何かあったら悲しむよ」
「大丈夫ですよ。伊澄の扱いは慣れてますから」
茄奈の心配を払拭するように、雪乃は力強く語る。
雪乃は自分が無事でいられることを信じていた。
でなければ、前向きな発言などできないからだ。
「行きましょう、明美ちゃんを助けないと」
二人の少女は、獣道を進んだ。

少女逹は、獣道を歩く。
雪乃と茄奈の間に、明美が加わっていた。
「星野……大丈夫か?」
茄奈は心配そうに声を掛けた。
「はい……」
明美は力無く言った。
彼女の顔は慧から暴力を受けたため腫れ上がり、見ていて痛々しい。
「まさか霧峰が助けに来るなんてな、思いもしなかったよ」
茄奈は言った。
二人の少女が来たときには、夜空が慧の前に立ち、明美がこちらに逃げて来たのだ。
少女達の作戦を実行せずに済んだが、何とも複雑な気分だった。
「きっと虚首さんです。霧峰先輩に連絡を取ってくれたんです」
「虚首……ああ、倉木と同じクラスの子?」
「そうです」
「後で礼を言わないとな」
茄奈は力強く言った。



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