「ほら、ソルテ、手を消毒しろよ」
「分かってるよ」
12月25日の深夜、サンタクロースのソルテは袋のふっくんが出した消毒液入りのスプレーを手に持ち、消毒液を手にかける。
「………結構面倒ね」
「仕方がないだろ、人間に病気をうつす訳にはいかないからな」
ソルテの言葉にふっくんは返した。
今の世の中は、未知のウイルスが流行っており、ソルテを含むサンタクロースは子供の家に入る前には必ず手に消毒をしなければならない。
ちなみにソルテの口にはウイルス対策としてマスクをしている。

ふっくんが不思議な力を使い、家の扉を開くと、ソルテは家の中へと入った。
「お邪魔します」
ふっくんが家の扉の鍵を静かに閉めた音がした直後に、ソルテは小さな声で言った。
時間帯は深夜1時で、廊下は静まり返っている。
ソルテは目的となっている子供の部屋に来て、やはり静かに子供部屋の扉を開けた。
「わぁ……」
ソルテは部屋の内装を見るなり声を上げる。何故ならサンタクロース、トナカイ、クリスマスツリーなどの可愛らしい装飾が施されていたからだ。
「澪(みお)ちゃんの部屋は可愛いね」
ソルテは呟いた。澪はこの部屋の主で、今は黄色いベッドの中で眠りについている。
「澪は折り紙で何か作るのが得意なんだとよ」
ふっくんは言った。ふっくんはプレゼントの主のことを前もって調べている。
「そうなんだ。だから澪ちゃんのプレゼントは折り紙なんだね」
ソルテは言った。
「だな、早くプレゼントを入れるぞ」
ふっくんは自らの中から澪へのプレゼントである折り紙を出した。
そしてソルテは澪のベッドにかかっている赤色の靴下にプレゼントをいれた。
「メリークリスマス、澪ちゃん」
ソルテは澪に柔らかな声で語りかけた。
その後も、ソルテはふっくんと共に子供達のいる家を回った。

クリスマスの世界にあるサンタクロース族の村に戻ってから2日後、ソルテは自分の家で
プレゼントをあげた子供や親からのお礼の手紙や贈り物を整理をする。
お礼や意見を伝えられるように「てんそうのこな」入りの小びんをプレゼントに付けているのだ。
「てんそうのこな」を物にかければソルテの家に到着する仕組みになっている。
「ソルテ、澪から手紙が来てるぞ」
ふっくんに声をかけられ、ソルテは手を止め、ふっくんの方を向く。
ソルテはふっくんから便せんを受けとり、便せんの封を開いた。
『サンタさんへ
プレゼントをありがとう、おり紙うれしかったです。お礼にサンタさんをおっていれました。
ウイルスに気をつけて、がんばってください みおより』
心暖まる手紙の中から、折り紙で折ったサンタクロースが入っていた。
見るなり、ソルテは嬉しい気持ちになった。


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