「ちぇっ、シケた金」
あたしは内心で不満を呟く。
バイトの帰り道だった。
高校を中退してから、あたしはバイトに明け暮れている。最も満足していないらしく親も「早く就職しろ」とうるさい。
家に帰ってからも親に散々言われるな。

高校に入った後は、確かに嬉しかったし、親も泣いて喜んでくれた。
でも、日が経つにつれて、空しさがこみ上げていた。
……なぜか明美の顔がずっと離れなかった。
部活に励んでも、友達とつるんで騒いでも、心にはぽっかりと穴が開いたままで、ずっと明美の顔があたしの中にあった。

あたしは気が付いた。明美が大切な人だって。

受験の時は両親が毎日のように喧嘩をして、とても勉強に専念できる状態ではなかった。
そんな時に、明美が怪我をして入院することになったんだ。
明美のことより、自分のストレスを晴らしたい誘惑に負けて、酷いことを口走ってしまった。
振り返っても、激しい後悔に襲われるくらいに。
その結果、明美には絶交され、中学生活を終えるまで寂しい生活を送ることになった。

あたしはばかだ。何であんな事を言ったんだろう。
瞳から涙がこぼれた。
後悔の涙だ。
やけになって退学沙汰を起こして。もう戻せないよね。

ごめんね、明美。

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