スピカはベッドで横たわっていた。
その表情は幸せそうだった。
一人分の足音がして、夫が入ってきた。
夫はスピカの隣にいる産まれた子供を見るなり、笑顔が零れる。
「ああ……この子が僕と君の子か」
夫は心の底から嬉しそうに言い、子供を抱き締めた。
「有り難う、スピカ」
夫の言葉が嬉しくて、スピカは笑った。
「仕事の方は平気?」
スピカは訊ねる。
夫は抜けられない仕事のため、出産に立ち会えなかったのだ。
「大丈夫だよ、一区切りついたから」
夫は言った。
スピカの胸に熱い気持ちが渦巻いていた。
結婚して、それからすぐに懐妊し、こうして自分の子を産んだのだ。
今まで生きていて、一番幸せだと感じた。
「わたしにも抱かせて」
スピカが頼むと、夫はそっと子供を手渡した。
一度抱いた時にも思ったが重く、しっかりと支えてやらなければ落ちてしまいそうだった。
スピカは子供の方をしっかりと見る。
「わたし……この子をちゃんと育てていきたい」
眠る我が子を眺めてスピカは言った。
母親になった以上、様々な困難が待ち受けていることは、承知の上である。
間違ってでも手放すなどしたくはない。
「この子はわたしの宝物だから」
スピカは子の頭を愛しそうに撫でた。

スピカにとって一生の宝物が、ここに誕生した。

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