「はい、翔太くん」
明美は幼馴染みの翔太に金平糖を手渡した。
翔太は明美の手のひらをまじまじと見つめる。
「なに?これ」
「金平糖よ、食べたことないの?」
「名前は聞いたことはあるけど、初めて見るからさ」
翔太の家は虫歯にうるさいらしく、甘いお菓子を禁止しているという。
分かってはいたが、明美は金平糖を翔太にあげるのだ。
大人の都合で、子供の自由を奪われるのは嫌なのだ。
「食べてみて、きっと翔太くん気に入るわ」
明美は言った。
翔太は明美の手のひらに乗った金平糖を一粒口の中に放り込む。
その途端、翔太はみるみる笑顔に変わった。
「すっげー!美味しいよ!」
「そうでしょ」
翔太は残りの金平糖を口に放り込んだ。
「オレ、お小遣い貯めて金平糖買うよ!」
翔太は明美に宣言する。
明美は幼馴染みが金平糖を気に入ってくれて嬉しかった。
アップルパイが好きだが、金平糖も好きなのだ。
「おばさんには内緒だよ」
明美は口元に人差し指を立てた。
「分かってるって!」

金平糖の甘い味は
明美にとって、幼馴染みを繋ぐ思い出になった。

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