私は昇さん……こと木之本先生と屋上に来ていた。
人気が少ないこの場所が落ちつく。
「はい、これ」
私は木之本先生に持参した弁当箱を渡した。
木之本先生は弁当箱を受け取って開く。
「わあ……」
木之本先生は声をあげる。
木之本先生と付き合い始めてから週に二回は私が手作りで彼に弁当を作っているのだ。
木之本先生は「いただきます」と一声出して、おかずを口に運ぶ。
「美味しいです」
木之本先生は表情を綻ばせる。
彼の安心した顔に、私は内心嬉しかった。
「味が濃かったりしない?」
「全然! 丁度いい感じですよ!」
木之本先生の弁当箱はあっという間に片付いていった。
私は木之本先生の顔を眺めつつ、自分のお弁当を食べた。
「輝宮先生のお弁当は最高です!」
「……有り難う」
木之本先生はいつもその言葉をかけてくれるので、作る私としてもやりがいがある。
私は彼のために、心を込めて食事を作っている。
彼の「美味しい」を聞くために。

私は幸せなこの時間を大切にしたいと思った。

 

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