カーテンを締め切った暗い部屋で、沙織はカッターナイフで写真を切り裂いていた。
沙織の瞳は虚ろで、正気を感じさせない。
沙織が切っているのは、中学の卒業アルバムで、特に沙織を傷付けた人間の顔はもう判別できないほどになっていた。

沙織は高校に進級しなかった。
いや、したくてもできなかったと言ってもいい。

入試を受けて、一応は合格した。
が、嫌がらせで受けた苦痛は沙織の心を蝕み、毎晩毎晩悪夢にうなされ、高校の入学式に言った際も、頭の中に記憶が蘇り、門を潜る事すらできなかった。

結局、沙織はわずか数週間で高校を中退することになった。

切るのに疲れ、沙織はベッドに潜り込む。
彼女の手元には、数枚の写真があった。
最も楽しかった、中学二年生の頃の写真である。
学園祭では合唱で褒められ、自ら主演で出た劇では優勝した。この頃は学校に来るのが毎日毎日楽しくて仕方なかった。

悪夢に変わったのは、中学三年生になってからだ。
なぜあんなクラスにしたのか編成した担任を呪いたくなる。

沙織は今日も、一日中部屋で過ごした。
高校の入学式以来、彼女は一歩も外に出ていない。

沙織はそっと目を閉じた。
過去の優しい思い出を胸に抱きながら……

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