みきはご飯を食べながらテレビを見ていると、知っている顔が出てきて驚いた。
 「のぞみちゃん……」
 みきは箸を止め、画面の中ののぞみが笑顔で取材に答えているのを見つめた。
 のぞみは有名なイラストレーターとなっていたのである。
 のぞみは小学生の頃の友人で、席も近かった事と趣味で絵を描いていることから仲良くなった。
 みきは動物に対し、のぞみはお姫様や魔女などキャラ絵を得意としていた。お互い絵の交換をするのは楽しかったし、のぞみに「上手いね」や「これ良いね」と言ってもらえることが何より励みになった。
 のぞみの絵が出てきた。子供に人気な魔法少女や妖精の女の子が中心だった。どれも華やかで可愛かった。
「のぞみちゃん、夢叶えたんだ」
 みきは呟いた。
『今一番誰に感謝したいですか?』
『私の小学生の頃の友達です。いつも私の絵を褒めてくれて、それがきっかけでイラストレーターになりたいと思いました』
のぞみはアナウンサーの質問に答えた。
きっと自分のことだとみきは思った。みじめな気持ちになり、みきはテレビを消して食器を片した。
テレビから早足で離れ、キッチンで食器を洗い始めた。
みきはのぞみと同じくイラストレーターになりたかった。愛らしい動物キャラを描いて周りに夢を与えたいと考えていた。
だが、のぞみの絵の方が同級生の人気が高く、みきはどれだけ頑張ってものぞみほど多くの人に見られることは無かった。やがて中学三年に進級し受験で忙しくなり、イラストレーターになりたいという夢すら諦めてしまった。
 あれから十一年が経ち、今は絵に関係のない会社で働いている。仕事は忙しいが、人に認められて充実していた。
しかし、のぞみが自分の夢を叶えて輝いているのを見て、このままで良いのかとみきは思ってしまった。
「夢に大事にしなよ」
 声が聞こえて、みきは手を止めて、左右を見回した。
「ここだよ」
 みきは右下の方を見ると、一匹のユニコーンがいた。
「あなたは……」
「ぼくは君に作られたユニだよ、君が夢のことを思い出したからでてきたんだ」
ユニは言った。ユニはみきが最初に描いたキャラで、のぞみにも「可愛い」と誉められた思い入れのあるキャラである。
「みきはイラストレーターになりたかったんだよね、本当に今のままでいいの?」
「いいとは思ってないよ、でもね私はどう頑張ってものぞみちゃんにはかなわなかったの」
みきは言った。
「そうかもしれないけど、みきの絵を好きだって言ってくれる人はいたよね、大勢の人に注目されるよりも喜んでくれる人の方が大切だと思う」
ユニの言っていることは一理あった。
のぞみと同じくらい注目されたくて絵を描く事に必死になり過ぎてしまい、肝心なことを忘れていた。人数はのぞみに負けるが、みきの絵を笑顔で見てくれる人は確かにいた。
ユニは背中の翼を羽ばたかせて宙を浮き、みきの顔に近づいて右足を伸ばした。
  すると、みきの頭の中には人の笑顔が出てきた。
 「みきちゃんのキャラ可愛いよ」
 「うさちゃん素敵だよ!」
 「また描いてよ、このりす宝物にするね」
 いずれもみきが描いた絵を見た時の同級生の顔だった。
「思い出した?」
「うん」
みきはうなずいた。
「みきはみきで自分が好きな道を進みなよ」
そう言うと、ユニはみきの前から姿を消した。
「ユニ……私頑張ってみるよ」
みきは力強く言った。
ユニとのふれあいで大切な事を思い出したみきは夢を実現させるために動きだした。

三年後
地道な活動が身を結び、みきはイラストレーターとなった。
みきが描くウサギやクマ等の動物はのぞみにはない可愛らしさがあり子供や女性に人気となった。
のぞみとも再会し、語り合った。
「みきちゃんのイラスト、すっごく可愛いね」
「ふふっ、有難う、これもユニのお陰なんだ」
みきは笑って、ユニの人形を出した。


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