「いーち、にーい、さーん……」
アステ兄ちゃんが数を数える。
ボクは兄ちゃんに見つからないように、木の上に登って隠れた。
友達も皆、隠れられそうな場所を探している。
ボクは今、兄ちゃんと友達と隠れんぼをしている。じゃんけんで兄ちゃんが負けて、鬼になってるんだ。
「もういいかーい」
兄ちゃんが声をかける。
今度は兄ちゃんに見つからない自信があった。
「もういーよ!」
ボクを含めて友達の声が幾つもあがった。

「ジュバ見ーつけた」
ボクがいる木の側から兄ちゃんの声がした。
「降りて来いよ!」
兄ちゃんは言った。
仕方なく、ボクは木を降りた。
「どうして分かったの?」
ボクは風船のように頬を膨らませた。
ボクが隠れてた木は、葉っぱがボクの体を覆って分からないのに……
兄ちゃんは笑って答えた。
「お前の足が見えてたんだよ、だから一目で分かった」
兄ちゃんは更に続けた。
「隠れるならもっと上手く隠れろよ」
全身が震える。
悔しかった。
今回は上手くいくと思ったのに……
ちなみに兄ちゃんは隠れんぼが上手い、簡単には見つからない所に隠れるから
兄ちゃんを探すのは難しい。
「今度は兄ちゃんが見つけられない所に隠れる!」
ボクは兄ちゃんに宣言した。
「そう言ってお前、すぐに見つかる所に隠れてるんだよな」
「今度は絶対見つからない!」
ボクは兄ちゃんを見返したいと考えた。
「まあ、頑張れよ」
兄ちゃんはボクの肩を叩いた。
馬鹿にしてる!
「他の奴らを探すぞ」
「絶対に、ぜーったい兄ちゃんに見つからない所に隠れてやる!」
ボクは兄ちゃんの背中に叫んだ。

ボクはいつか兄ちゃんを追い越すんだと、誓った。

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