お昼休み
李里子は親友の亜衣と、亜衣の恋人である正人と食事をしていた。
「どうかな? 私の手作りの卵焼き」
「美味いよ」
「本当? やったあ!」
正人の反応に亜衣は両手を伸ばした。
「亜衣、土江くんと付き合うようになって料理うまくなったよね」
李里子は亜衣の弁当箱を見て誉めた。
李里子の土江とは正人の苗字である。
亜衣と正人が付き合い始めてから二ヶ月経ち、二人の仲の良さは、友達の李里子が羨ましいと感じるほどだ。
最初は亜衣に気遣い、正人と食べるように言ったが本人は三人で食べようと言ってくれたことで、今では三人一緒が当たり前である。
今のところ、正人の口から不満は出ていない。
「まさくんには美味しい物を食べてもらいたいからね」
亜衣はやる気に満ちていた。
「李里子もどう?」
亜衣は自分のお弁当箱に指を向ける。
「私はいいよ、亜衣のだし」
李里子は遠慮する。
正人のために作ったおかずを食べる訳にもいかなかった。
「そう、なら食べちゃうよ?」
「いいよ」
李里子が言うと、亜衣は自作のおかずを口に運んだ。
その後も、亜衣は残ったおかずを正人に食べさせ、クラスでも有名なカップルぶりをアピールしていた。

 

授業が全て終了し、李里子は帰り支度をしていると亜衣に声をかけられた。
「李里子ー帰ろう!」
亜衣は李里子の肩を叩く。
「ちょっと待ってて」
李里子は教科書をカバンに入れて、背負った。
「お待たせ」
「早く早く~まさくんも待ってるから」
亜衣は急かすように言った。
正人は廊下で二人の少女が来るのを待っている。
「ねえ亜衣」
「何?」
「私が一緒に混ざってもいいの? 土江くんに悪いよ」
李里子は言った。
たまには正人と二人きりになってもらいたいと思ったのだ。
「心配いらないって、まさくんは話が分かるから」
「でも……」
李里子が言おうとすると、亜衣が立ち止まる。
「アタシはまさくんも李里子も大事なの、どっちが欠けても嫌なんだ」
亜衣は真剣な顔で言った。
「だから三人で帰ろう」
「亜衣……」
亜衣の言葉に、李里子は嬉しさを感じた。

これからも亜衣には幸せでいて欲しいと、李里子は思った。

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