「はい、これ」
ジョディは小さな少女に風船を手渡した。
少女は風船を受け取り、目をきらきらと輝かした。
「ありがとう! 大切にする!」
少女は笑顔を浮かべ、風船を握り締めたまま元気良く走っていった。
「もう離しちゃ駄目だぞー!」
ジョディは手を振り、少女を見送った。
「いい事をすると気持ち良いな」
両腕を伸ばし、ジョディは囁く。
さっきの少女は風船が高いところに引っかかり、取れないと泣いていたので
ジョディが代わりに取ってあげたのである。
ジョディは人の役に立つことが好きだった。困った人間を見ると放っておけない性分なのである。
仕事の合間を縫って、人助けをしている。
「ジョディ兄ちゃ―ん」
子供達の声が耳に入り、ジョディは声のした方角を向く。
三人ともジョディの顔馴染みで、よく一緒に遊ぶ仲である。
三人の顔は悲しげで、何か問題が起きた事が目に見えて分かる。
「どうしたの?」
ジョディは三人に優しく語り掛ける。
「大変なの! 子犬が川に溺れているの!」
髪の短い女の子は瞳に涙を一杯に溜めている。
一秒でも早く助けて欲しいという願いが痛いほどに伝わってきた。
この後仕事があるのだが、子供の願いを聞く方がジョディにとって大切に思えた。
「その川に案内して」
ジョディは短く言った。
三人の子供は「こっちだよ!」とジョディに手招きをした。
ジョディは子供達の小さな背中を追う、早く犬を救うために。
自分のことより、相手の幸せを守りたいのだ。
ジョディは思った、子供の笑顔が戻ることを。

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