アタシの頭に固い物が当たり、集中力が途切れた。
下を見ると、そこには消しゴムが落ちていた。
周囲から女子の笑い声が静かに響く。
アタシは横にいる女子を見ると嫌らしく笑っていた。
アタシは頭を軽く振って再び黒板を眺めた。

アタシこと、神宮みゆきは女子からいじめを受けている。
原因は横にいる宇城淳子が全て元を作った。彼女はアタシの中学の同級生で
その頃から、性格的にアタシのことが気に入らず、同じクラスなってからは
気が合いそうなクラスメイトを引き込んで、学校にいる間はずっといじめ行為を繰り返す。

入学してから間もなくなのに、卒業を考えるようになった。

学校からようやく解放され、アタシは人気のない道を歩いた。
身体中のあちこちが痛む。原因は淳子がアタシの体に執拗な暴力を加えたからだ。
腕を動かすと刺すような痛みが走る。制服で隠れているが青アザができている。
……こんなの親には見せられない。
アタシは表情を歪める。

淳子なんか消えてなくなれば良い。あいつが存在するからこんな目に遭うんだ。
そうすなれば、どれだけ楽になるか……

「あなたの願い、叶えてあげましょうか」
声と共に、アタシの目の前に現れたのは 、一人の女だった。
二十代くらいの人だ。
「あなたは……?」
「私は麗佳、ダークジュエルの渡し人と呼ばれているわ」
ダークジュエルと聞き、アタシは驚いた。
ダークジュエルは手にすれば自身が望む人間を消すことができるという。
ただこれは噂話で、本当に実在するのか怪しいところである。
「願いって……?」
「あなたが望むことよ」
麗佳と名乗った女は淡々と語る。
「どんな願い?」
「あなたが一番憎いと思っている相手を消すことよ」
麗佳は手のひらに青色の宝石をのせていた。
「それは?」
「ダークジュエルよ、これを握りしめて心に強く思えば憎い相手を消すことができる」
アタシは生唾を飲み込んだ。
彼女が言うように相手を消せるのだろうか?
疑問が頭の中に過った。
「本当に願いは叶うの?」
「信じるか、信じないかはあなた次第ね」
彼女の瞳は泳いでいない。嘘を言ってはなさそうだ。
半信半疑で、アタシは青色の宝石を手にした。よく見ると、鮮やかな青色をしていて綺麗だ。
「交渉成立ね、使い方はさっき言った通りよ……ただし」
彼女は一息ついた。
「色が濁ったら使うのはやめなさい。でなければ取り返しがつかないことになるわ」
彼女の口調は厳しさが込められていた。
彼女の忠告は守るつもりだ。淳子をどうにかすれば、それ以上は望まない。
「分かった。約束するわ」
アタシは言った。
「あなたに幸せが訪れることを願っているわ」
彼女は言うと、アタシに背を向けて去っていった。

その後、アタシは家に帰り、ダークジュエルを眺めた。
「これで本当に人を消せるのかな?」
率直な疑問だった。もし偽物だったら困る。
例えタダで貰ったとしても。
アタシは考えてみた。
淳子も憎いが、同じくらいに憎い人がいるか。
淳子を除くクラスメイトにはいじめに加わる人とそうでない人がいる。
火事だって早めに手を打てば被害を最小限に抑えられるのと同じように、止めないのであれば、皆は加害者だ。
クラスメイトの皆を消すか? と言われるとそれは却下だ。クラスで孤立する前までは友達だった子もいたからだ。
淳子がいなくなればまた仲良くなれるかもしれない。
淳子を除くクラスメイトを外し、アタシは額に指を回して再び考えた。
……先生だって気づいているのに、止めようとしない。
アタシはふと思った。
アタシが先生にさされて立った時も笑い声が聞こえたり、アタシの所にプリントが頻繁に回ってこなかったり、目に見えて異変があるにしても見てみぬふり。
特に腹が立ったのは社会の前村だ。プリントがアタシの所に回って来ないのを、アタシの責任感の無さだと言いがかりをつけて廊下に立たせたことがある。
思い出すだけで腸が煮えくり返る。
決めた。
ダークジュエルの効果を試す対象は前村にしよう。
憎みたくなるには十分な理由だ。
アタシはダークジュエルを両手に握りしめ、前村を消すように強く念じた。

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