「そう、結婚おめでとう」
「ごめんねせりなより先で、あんたも早く結婚しちゃいなよ、とっても楽よ」
「……そうしたいけどね」
「いっけない、そろそろ旦那が帰ってきちゃうから電話切るね、またかけるから」
友人は幸せそうに言うと電話を切った。
「簡単にできたら苦労しないって」
私は携帯電話を放り出し、ベットの上で大の字になった。
 ……これで私が知っている限り友人が結婚したのは三人目だ。どうしてこう早く相手を見つけて結婚するのだろう?
 「はあ……」
 私は大きく溜息をついた。
 人と比べても仕方の無いことは頭の中では理解している。若くしてする人もいれば、とてつもなく遅い人もいる。
 結婚する速度は人それぞれなのだ。  
 それでも私の周りでは驚くほど早く結婚する人が多い、私の心は周囲に置いていかれる事に対し強い不安を抱く事もある。
 例えるならば、暗い道の中に一人取り残されたような感じ。
 私だって結婚がしたい、好きな人と家庭を築きたいし、幸せになりたい。
 気持ちを紛らわすために、私は冷蔵庫に移動し、一本のビールを取り出して飲んだ。口の中に苦い味が広がる。
 ブルーな現実が目の前にあるためか、一層苦く感じた。
 「人生って思うようにならないな」
 冷蔵庫に背を預け、私は胸の内を呟く。
 早く結婚したいと焦るばかりで、彼が出来てもすぐに破綻する。この繰り返しだ。
 悪循環を変えないといけない。
 私は今までの行いを振り返る。私の心が滅茶苦茶で、まるで絡み合った迷路みたい。
 何を求めているのか、まるで分からない。
 どんな男性と出会いたいのか、心が定まっていない。
 これじゃ見つけたくても、見つからないはずだ。
 空になったビールの缶を捨てて、私はベットに横になる。
 お酒に頼ったお陰か、気分が少し楽になった。
 「明日はパーティに行くか」
 明かりを消して、私は瞼を閉じる。
 不安は消えたわけではないけど、しり込みしていても仕方が無い
 何事も前向きに……

 どんなに遅くなっても。
 良い縁に巡り会えることができますように。
  
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