雨が降る音が響く自室で英輔は電話していた。
『それ、マジかよ』
「……ああ」
英輔は友達の一慶にため息混じりに言った。
『よりによって水野さんがな……英輔もやるじゃねーか』
一慶は明るく言った。
英輔は幼馴染みである水野小夢に告白されたのだ。その事を信頼できる友人の一慶に相談したのである。
「お前はそうだろうけど、俺は水野に対して恋愛感情はないんだぞ?」
英輔は真剣に口走る。
水野とは幼稚園の頃からの付き合いで、小学生の時は遊ぶにしても登下校も一緒だったものの、中学に上がった今は英輔の部活の関係で水野との登下校が難しくなり、一緒に過ごす時間が少なくなった。
『水野さんは可愛いじゃねーか、俺だったら付き合うけどな』
「おいおい……」
一慶の意見に英輔は呆れた。
水野は肌が白く、目がぱっちりしており男子から見れば可愛いに入るのだろう。
だが英輔は見た目だけで付き合うのはどうかと考えている。
『とにかくそういう大事なことはお前が決めろ、俺が決めることじゃねーからな』
「分かったよ、話を聞いてくれて有難う」
一慶との電話を終え英輔はベッドに横になる。
「さて……どうするかな」
英輔は呟く。
水野に対し恋愛感情がないと言ったが、友達としては大切だと思っている。

英輔の脳裏に水野が告白する場面が蘇った。
「私……英輔くんのことがずっと前から好きだったんです! 良かったら付き合って下さい!」
直球な水野に、英輔の口はしばらく開かなかった。
水野に告白されるのは本当に想定外だからだ。
英輔は考えた挙げ句に、生唾を飲み込んで水野に言った。
「水野の気持ちは嬉しいよ……でも時間をくれないか?」
英輔は一週間後に返事をすると約束した。
水野は容姿が可愛いだけでなく料理や裁縫が上手く家庭的だ。
ちょっとドジな所もあるが付き合うにしても問題ないだろう。
ただ英輔は慎重だった。水野は別の男子生徒と付き合っていたが数ヶ月で男子生徒から別れを告げられしばらくの間水野は落ち込んでいたからだ。
水野と付き合うなら幼馴染みの気持ちを尊重したいと思っている。
どちらの選択にしても水野との関係が変わってくるに違いない。

雨が止んだのは日付が変わった頃だった。
この日水野に答えを出すのだ。
「……風呂に入って寝るか」
英輔は言った。大体の結論はまとまったので休もうと決めた。
英輔の答えがお互いにとって良い道を歩めると信じて……

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