むかしむかしあるところに、金色のかみにくりっとした緑色の目をした可愛い女の子がいました。
そんなある日のことでした、女の子のおばあさんが赤い布で、女の子の誕生日プレゼントにと赤いずきんを作りました。
そのずきんが女の子に似合っていたので女の子のことを『赤ずきん』と呼ぶことにしました。
女の子はおばあさんから貰った赤いずきんがとても気に入りました。

ある日のことでした。お母さんは赤ずきんを呼びました。
「赤ずきん、おばあさんが病気なの
おばあさんはお前を可愛がって下さったのだからお見舞いに行きなさい」
「はい、お母さん」
お母さんはバスケットを赤ずきんに渡しました。
「おばあさんが好きなマドレーヌとブドウ酒を入れておいたわ
これをおばあさんに届けてね
寄り道してはダメよ、オオカミには気を付けなさい、もし出会ったとしても相手にしてはいけませんからね」
「はい、気を付けます」
赤ずきんは元気に言いました。
「それでは行ってきます」
赤ずきんはお母さんに手を振って家を出ました。

おばあさんの家は歩いて三十分の森にあります。
空は青く、ぽかぽか陽気で赤ずきんは鼻唄を歌いながら歩いているとオオカミが現れました。
「やあやあ赤ずきん、今日はどこかにお出掛けかい?」
オオカミが話しかけてきました。
「こんにちわオオカミさん今から病気のおばあさんの家に向かう所よ」
赤ずきんは正直に答えました。
「赤ずきんの持っているバスケットには何が入っているのかな?」
「おばあさんが好きなマドレーヌとブドウ酒よ」
「そうかい、早くおばあさんの病気が良くなるといいね」
オオカミは言いました。
お母さんにはオオカミを相手にするなと言われましたが、明るく話しかけるオオカミがお母さんが言うほど悪い動物には思えませんでした。
「ねえ赤ずきん、おばあさんの家に行く前に花をつんでいったらどうかな? きれいなお花を見せればおばあさんも喜ぶと思うよ」
オオカミは指を差しました。
「あの先にきれいな花畑があるよ」
「分かったわ、有り難うオオカミさん」
赤ずきんはオオカミが指差した方へ行きました。
おばあさんは花が好きなので見せれば喜ぶと思ったのです。

少し歩くとオオカミが言うようにきれいな花畑がありました。
「わあ……きれい」
赤ずきんは笑顔になりました。
そして赤ずきんは花をつみ始めました。大分花がたまってきた時の事でした。
赤ずきんとよく遊ぶ妖精が現れました。
「こんにちわ赤ずきん」
妖精が声をかけてきました。
「こんにちわ妖精さん」
「こんな所に来るなんて珍しいね」
「実はね……」
赤ずきんは妖精に話しました。
おばあさんの病気でお見舞いに行くこと、オオカミに花畑のことを教わったことを。
妖精の表情はくもりました。
「赤ずきん、すぐにおばあさんの所に行った方がいいよ、あのオオカミはぼく逹妖精の間でもたちの悪い動物だと言われてるんだ
ぼくの仲間もオオカミにおそわれたことがあるんだ」
妖精は言いました。
オオカミはおばあさんの元に行った可能性があるからです。
「ぼくもついていくよ、オオカミをこらしめたいからね」
妖精は力強く言いました。
赤ずきんは妖精と共におばあさんの家に行きました。
いつもは閉まっているおばあさんの家の扉が開いていました。
「どうしたんだろう、いつもは閉まっているのに」
「ぼくは赤いずきんの中に隠れてるよ、気を付けて」
そう言って妖精は赤いずきんの中に入りました。
「うん」
赤ずきんは扉をノックしました。
「こんにちわ、おばあさん」
「赤ずきんかいよく来たね、中にお入り」
おばあさんは答えました。
赤ずきんは中に入ると、いつもは漂ってくる花の香りとはほど遠いけもの臭さでした。
「こんにちわ、おばあさん」
不安になりつつも赤ずきんはベットに横たわるおばあさんに声をかけまして。
しかし、先ほどとは違い返事がありません。
心配になり、赤ずきんは聞きました。
「おばあさんのお耳はずい分大きいのね」
すると、おばあさんは口を開きました。
「それはね赤ずきん、お前の声を聞くためだよ」
「目もいつもと違う気がするわ」
「心配いらないよ、赤ずきんの姿を見るためだよ」
「手もこんなに大きかったかしら」
「この手はお前を抱きしめるためだよ、小さかったらできないだろ」
「一番気になったのはその口よ、おばあさんの口が大きくなっておどろいたわ」
「それはだね……」
おばあさんは起き上がりました。
「お前を食べるためだよ!」
おばあさんに化けていたオオカミは言うと大きな口を開きました。
その時でした。赤いずきんの中に隠れていた妖精が現れ持っていた眠り粉をオオカミにまきました。
オオカミはいびきをかいで眠り始めました。
「危なかったね」
「ええ……」
「このオオカミは食いしん坊だから、もしかしたらおばあさんはオオカミのお腹の中かもしれないから助けてあげよう」
妖精が口笛を吹くと、窓から何人か妖精が入ってきました。
妖精の仲間です。
「ハサミでオオカミのお腹を切って欲しいんだ」
妖精逹は家の中を飛び回り大きなハサミを見つけました。
妖精逹はハサミを使いオオカミのお腹をジョキジョキと切り始めました。
「ああ、ひどい目にあったよ」
するとお腹の中からおばあさんが出てきました。
おばあさんは病気だったはずですが、オオカミに食べられたことがきっかけで、病気がなくなっていました。
「赤ずきんや、庭にある石を持ってきておくれ、このオオカミをこらしめてやりたいね
妖精さんも手伝っておくれ」
赤ずきんは妖精逹と共に石をオオカミのお腹に詰め込み、おばあさんがお腹を糸で縫い合わせました。
そしてオオカミを元のベットに戻し、赤ずきん逹はおばあさんの家の側にある物陰に隠れました。

少しするとオオカミがおばあさんの家の扉を開いて現れました。
「お腹が重いな、食べ過ぎたかな?」
喉がかわいたオオカミは近くの川にいき水を飲もうとした瞬間、お腹の重みが原因で川に落ちてしまいました。
オオカミがいなくなり一安心です。

赤ずきんは元気になったおばあさんと妖精逹と過ごして家に帰りました。
今日の出来事をお母さんに話しました。
赤ずきんは最後に言いました。
「もう寄り道もしませんし、知らない人や動物に話しかけられても知らん顔します」

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