多くのあじさいが咲く場所に、小人たちが住んでいました。
その小人の中にロッセルという女の子がいました。
ロッセルはお母さんと二人で暮らしていました。
「じゃあ学校に行ってくるね」
「気を付けてね」
ロッセルが言うと、お母さんはロッセルに手を振りました。
ロッセルは他の小人たちと一緒に歩いていると声をかけられました。
ロッセルの友達のマルネです。
「おはよう、ロッセル」
「おはよう、今日も花柄キレイだね」
ロッセルはマルネに言いました。
マルネは金色の髪に緑色の目に真っ白なあじさいの髪飾りにスカートがよく似合っています。
ロッセルは紫色の髪と目に同じ色のスカートのため、マルネと比べると地味に感じてしまいます。
「ロッセルの服も素敵だよ、私も着てみたいな!」
マルネは明るく言いました。
「よかったら今度私の家に来て服を交換しようよ!」
「ありがとう、そうしてみようかな」
ロッセルはマルネの明るさにはげまされました。
二人が楽しく話している時でした。
「やーい、地味なロッセルがいるぞー!」
「やーい!」
「地味地味ロッセル!」
ロッセルをからかう三人の小人がいました。
真ん中はラックと言い、ことある事にロッセルの見た目をからかってきます。
二人はラックのとりまきです。
「気にしちゃだめよ」
マルネは言いました。
ロッセルは三人の声を無視しました。からかいには慣れてても心はいたみます。
「平気だよ」
マルネに心配かけまいとロッセルははきはき言いました。

その後学校が終わり、マルネの家に行き服の交換遊びをして夜になりました。
ロッセルはお母さんと夕飯を食べました。
「今日はどうだった?」
お母さんは訊ねてきました。
「楽しかったよ、マルネの服はどれも可愛いかったよ
ワンピースを一枚マルネがくれたんだ」
ロッセルは機嫌良く言いました。
マルネの服はロッセルが持ってない素敵なものばかりでした。
「そう、良かったわね」
「明日そのワンピースを着てくんだ」
ロッセルは想像してうきうきした気分になりました。
ロッセルはこの後も楽しい話ばかりして、ラック達にからかわれた事を決して言いませんでした。
お母さんに心配をかけたくなかったからです。

マルネにワンピースを貰ってからしばらく経ってからのことでした。
この日は学校が休みで、ロッセルはお母さんの料理の支度を手伝っていました。
ロッセルが好きなあじさいケーキを作るためです。
「あら」
お母さんはあじさいのさとうが入っている壺を見て声を出しました。
「どうしたの?」
「あじさいのさとうが無くなっているわ」
「分かった。私が買ってくるよ」
ロッセルは言いました。
お母さんにお金を受けとると、ロッセルはいつも買い物をするお店に向かいました。
「すみません、あじさいのさとうを下さい」
ロッセルはお店の番をしているおばさんに言いました。
「ごめんなさい、あじさいのさとうは売ってないんだよ」
「そんな……」
ロッセルは困りました。
あじさいのさとうはこの店でしか売ってないからです。
その時でした。
「どうしたんたんだよ」
ラックが一人で店に現れました。
ロッセルは口を閉ざしました。またからかわれるのが嫌だからです。
おばさんがロッセルに代わって事のなりゆきを伝えました。
するとラックはロッセルに言いました。
「おれさ、あじさいのさとうのある場所知ってるから取りに行こうぜ」
ラックの言うことを信じられず、ロッセルは首を横にふりました。
ラックのことを信じられないからです。
「大丈夫よ、ラックを信じて、ラックはあなたを助けてくれるわ」
おばさんは優しくロッセルに語りかけました。
おばさんに背中を押される形でロッセルはラックと共に店を出ました。
ラックは二人の取り巻きに話をして、一人が動きだしそれは大きなてんとう虫を連れてきました。
ロッセルはラックと取り巻き二人と共にてんとう虫の背に乗り空へ飛び立ちました。
「あそこに大きなあじさいがあるよ!」
もう一人の取り巻きが言いました。
先にはあじさいのさとうを作る一際大きなあじさいが咲いています。
てんとう虫はゆるやかな早さで大きなあじさいに向かいました。
大きなあじさいの元にたどり着き、ロッセルはあじさいのさとうの材料であるあじさいのしずくを手に入れました。
「これであじさいのケーキを作れるわ、良かった」
ロッセルは安心しました。
おばさんのいる店に戻り、おばさんにあじさいのしずくからあじさいのさとうにしてもらいました。
「有り難う、ラック達のおかげで助かったわ」
ロッセルはラックと取り巻きに二人に感謝を口にしました。
三人が協力してくれなければあじさいのケーキを作れず、お母さんをがっかりさせていたからです。
「でもどうして助けてくれたの?」
ロッセルは聞きました。
いつもからかう三人が人助けというのも不思議に思ったからです。
「ロッセルはお母さんのためにあじさいのさとうを買おうとしたんだろ、だから放っておけなかったんだ」
ラックは言いました。
普段はロッセルをからかっている三人ですが、今回助けてくれたことでラック達に対する考えが少し変わりました。
悪い所ばかりでなく、良いところもあると。
「お礼にケーキをごちそうするけど食べる?」
ロッセルの問いかけに三人は首を縦に振りました。

ロッセルは三人とマルネを交えてお母さんが焼いたあじさいのケーキを食べました。
美味しいあじさいのケーキですが、一層美味しく感じられました。


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